キツネ狩りにあった

お正月ムードもだいぶ薄くなってきたとある日、買い物から帰ってくると、カンカンカンという鐘の音、そしてドンドコという太鼓の音と共に、大勢の子供の歌う声が聞こえてきた。
ご近所で何かしらの催しかなあと思っていのだけど、車をおりて驚いた。振り返れば、奴らは後ろにいたのである。

すると先頭に「立たされている」感200点の少年、か細い声で説明してくれたのだが、どうしよう。1文字も正確に聞き取れない。

シャイな彼のナイーブハートを傷つけたくないので何度も聞き返したくはないのだが、テンション高めのお囃子にかき消されるその声を結局5回くらい聞き返して(ゴメン)、やっと答えを捉えた私の鼓膜。

ほう
もうすこしくれ。情報を。
やりづらくてごめんな

玄関先でカンカンドントコやってる子供たち、それがキツネガリというものだというとこまで分かった。そしてどうやらお参りとか厄払いとか、そんな慣わしのようであるということも何となくわかった。しかし一体何をもってして完了とされるのかが分からない…。なんかあげるのか?おどるのか?何かしらの合言葉があるのですか?

モタモタする私にあからさまに飽き始めている列の子供たち、はやく解放してあげたいし、私も早く家に入りたい。答えを教えてくれよ…という気持ちでシャイボーイの説明を待っていると、彼の様子を見守っていたいたリーダー的なベンチコート君が、業を煮やして説明をつづけてくれた。

キツネのその先になにがあるの、カモン
ほう。

ところでご褒美ってお菓子なの?お小遣いなの?
ハッピーニートから仕事人になったとはいえ、ギャラが入るのはまだ先なんや。20人の少年にお小遣いをばらまく財力は、わるいけどおばちゃんにはないんやで。と、ちょっとドキドキしながら「何をあげたらいいかな?」と聞いてみると、

かれこれ15分ほど微妙に噛み合わないやりとりをし、ゲットしたご褒美へのこだわりのなさよ。納豆で悪いキツネを狩ってもらうなんて、そんなコスパの良い話があるのだろうか。
気の利いたお菓子のひとつもないのがなんだか申し訳なくなって、お揚げもオマケして渡すことにした。どうもありがとう。ご苦労様。

なんてこった。強引目のトリックオアトリート。
新年のド平日に、不意をついてカツアゲされたみたいな気分だぜ。
狩ったのはキツネのはずなのに、狩られた気分を味わえるイベント、それがKITSUNEGARI。

これだからやめられないね、ジャパニーズトラディショナルイベント。

キツネガリ?キツネガエリ?

この突然でシュールな訪問、気になったのでググってみると、実はネットには詳しいことが多くは上がっていなかった。
ざっくり読んだ話だと、兵庫県から京都府にかけての広い地域で行われていた行事で、「キツネガエリ」と呼ばれることもあり、狐は良い者とされていたりもするとかしないとか。いずれにしても、地域によって少しやり方は違ったりしながらも、形式としては「突撃トリックオアトリート」な催しのようです。

意味合いとしては厄払いをしてお家に福を呼ぶというものみたいだけど、詳細はお決まり「諸説アリ」な伝統のもよう。

この夜は日が暮れてから何時間も太鼓の音が近所で鳴り響いていて、こういうのも風情があって良いなあと思う反面、何時間も外を歩かされる子供たちを思うと気の毒になりました。

カツアゲだなんて言ってごめんよ。納豆と厚揚げのために、頑張ってくれてありがとう。どこかで彼らがお菓子やお捻りをたくさんくれる長者さんみたいな人に出会えてますように。

宮城県生まれ南仏育ちのイラストレーター|デザイナー

2 Comments

  1. tomoyo
    2020年1月23日

    こんにちは。
    Facebookでシェアされてた方がおられて、読ませて頂きました。

    申し訳ないですが、爆笑させて頂きました(* ̄∇ ̄*)

    実は私の子供(小2)も、そのトリック・オア・トリート的な行事に参加してまして、さぞかしびっくりされたと思います(^^;

    今は、子供たちの親も所々で見守りながら行事を進めていますが、一昔前までは子供だけで行ってたんです。
    なかなかハードな行事でしょ(^_-)☆
    今年は10時過ぎに帰ってきましたが、年によって12時を過ぎて帰ってくる年もあります。

    その代わり、頂いた物は全て子供たちで分ける事になっているので、今年も子供はその頂いた金額に驚き、大喜びしてました。

    毎年、1月14日の5時過ぎに始まります。
    来年もドンカンドンカン参りますので、おられましたらポチ袋にお心付けをお願いいたします(^^)

    返信
    1. saika
      2020年1月23日

      おかあさまー!
      我が家はシェアハウスなもので地元のものがおらず、何事かと思ったと同時に、子どもたちも「何故知らんのか?!」という戸惑いに巻き込んでしまいましたね笑笑

      遅くまで頑張る子供たちに、来年は人数分の納豆をご用意してお待ちしてまーす!

      返信

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